当院の胚移植について

当院で行っている胚移植についてお話しします

胚移植の成功、つまり妊娠することを考えるならば、不妊治療において最も重要なイベントは胚移植ということになると思います

熟練した培養士が細くて柔らかい移植カテーテルの中に、慎重に一個の胚を入れます。医師はそれを受け取り、拡大した超音波でカテーテルの先端を確認しながら、慎重にすすめてゆき、着床してと念じながら、子宮内膜の最も厚い場所に胚を置いていきます

胚移植を成功させるために、当院では事前に子宮の角度や向き、子宮頸管の長さをチェックします。子宮の形を把握してないと、いざ本番で移植に時間がかかって失敗する可能性があるからです

当然、子宮内膜の厚さやホルモン値も正確に調べて、異常がある場合は胚を融解する前に胚移植を中止します。また当院独自の方法として、1週間前の内膜厚と比較して、20%以上の子宮内膜厚低下がみられた場合も胚移植を中止することがあります

胚を移植するタイミング(排卵からの日数)やホルモン補充周期のプロトコールは、過去のデータから妊娠成功率が確立された方法で行っています

グレード不良胚について

当院では2年前よりグレード不良胚(CB、BC、CC)の凍結保存をやめました

また今年2月より、同様に移植妊娠率が低いとされる培養7日目胚の凍結保存も中止しました

グレード不良胚の扱いについては、先日の学会でも議論され、各クリニックにおいても様々な意見があると思います

特に保険診療では胚移植回数の制限があるためが、妊娠率の低い胚を移植することで患者さんの貴重な移植回数が減ってしまうのではないかと危惧されます

一方で、ごく僅かでも妊娠の可能性がある胚なら移植した方がいいのではないかとの意見もあります

どちらにも一理あると言えますが、私は前者の方が重要と考えました

オビドレル 出荷停止

不妊治療薬の「オビドレル」が出荷・販売停止となりました

オビドレルは発育した卵胞を成熟させるという、排卵トリガー薬(HCG製剤)であり、高刺激排卵誘発ARTを行う場合には必要不可欠な注射剤です

当院では、排卵トリガーとしては「ブセレリン点鼻薬」を主に使用しているため、治療法への影響は少ないと思われますが、薬剤が連鎖反応的に出荷調整されている現状をみると、今後も注視して行かなければいけないと思います

現在、すべての排卵誘発注射剤が何らかの出荷制限に陥っており、ますます自然周期・低刺激法の必要性が高まるものと思われます

今年(2022年)の当院治療成績

本日は当院の仕事納めであり、今年の治療成績をまとめてみました
妊娠継続率は今年(2022年)が40.6%と前年(38.9%)・前々年(36.6%)に比べて高くなっています(図1)
今年から保険診療が開始となり、不妊治療の質が落ちると危惧する声もありましたが、結果としてそのような心配は全くなかった、ということが当院実績で証明することが出来ました
同時に、妊娠・卒業患者数は前年(438人)、前々年(453人)に比べて、今年は671人と格段に増やすことが出来ました(図2)
我々不妊治療施設の目的は、一人でも多くの患者さんが妊娠して、当院を卒業されることです
そういう意味では、今年はとても成果のある一年であったと言えるのではないかと思います
来年も同様に高い成績を残せるよう、職員一同頑張りたいと思いますので、皆様よろしくお願い申し上げます

 

不妊治療薬の不足状況について

最近、不妊治療薬(注射型の排卵誘発剤や黄体ホルモン剤)が相次いで出荷調整・制限となっています

原因として、保険開始による治療患者数の急激な増加の他に、新型コロナやウクライナ情勢も関与していると言われています

そのため、高刺激治療を行なっているクリニックでは、患者さんあたりの薬使用量が多いために供給量が追いつかず、治療延期や中断をお願いしていると聞きます

当院では低刺激法と小卵胞採卵を組み合わせて治療を行なっているため、薬剤の現保有量は安定していますので、どうぞご安心ください

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